第1章の続き

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 昼を前にして、好調にコインを吐き出していたパチスロ台がうんともすんとも言わなくなった。  止め時だと思い精算すると、勝ち金額は3万円と少しになっていた。  昼食を隣のラーメン屋で済ませ、昼間確実に集金が出来る企業や商店を回って販売所に戻った。  事務所で入金をしたが、まだ6万円ほど使い込んでいた。  給料日精算をすれば済む釣り銭の4万を差し引いてもまだ2万――。  慌てて4万円分程度の領収書の半券を提出せずに隠した。  つり銭となる金を残しておかなければ仕事にならないからだ。  「おい蓮。チラシのパートが一人しばらく休むんだって。  だから空きの人間で交代に手伝えってよ。奥さんからの命令な」  事務所から出た途端に渡辺が言った。  「じゃぁ今日俺やるよ」  「いいのか? じゃ頼むな」  週の後半に連れてチラシの量が増えて行くし、その頃には集金も佳境を迎える時期となる。  雑務を進んで引き受ける優等生を演じた訳ではなく、今日は月曜日だからそれほどチラシは多くないという打算が有ってのことだった。
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