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◇
学校から帰り、そのままシャワーを浴びて出たところに、インターフォンが鳴った。
「はい」
オートロックのモニターには、ヘルメットで潰れた髪をしきりに直す蓮の姿があった。
「鍵開けておくから入って来てね」
洗面所でドライヤーを当てていると玄関の開く音がし、鏡の中に蓮が映った。
「千里。これから店か?」
「うん。同伴」
ママが赤坂で経営するクラブを、週3回手伝っている。
ママは社会勉強だと言って、17歳のわたしを店に出す。
それが体の良い言い訳で、不景気で売上の落ち込んだ店を助ける為なのだということは百も承知だ。
本音では、彼氏である蓮や友達と遊ぶ時間がもっと欲しいが、家計を助けると思えば仕方がない。
それに、1月に20万の小遣いと、高校に近いこの原宿で一人暮らしをさせて貰う、という交換条件も魅力的だからだ。
ママにとっては、それでも女の子を一人雇うよりも安く上がるのだ。
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