第1章の続き

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 メイクをし、ドレスを着れば学校にバレない自信はある。  しかし、酔ったオヤジ達を相手に酒を作ることには全く面白味を感じない。  体に巻きつけたバスタオルを外され、後ろから抱きつかれる恰好になった。  鏡に映った自分の裸を見て、少し色黒だがスタイルは悪くないと思う。  何よりも自慢の細く長い脚は、中国人であるママの血を引いたものだ。  ママの雅文(ヤーウェン)は今のわたしと同じ年頃に、実兄の洪(コウ)と共に日本に渡ってきたという。  異国であるこの日本の地で、若い2人の中国人兄妹は言葉に出来ぬ苦労をしてきたことだろう。  わたしにとって叔父にあたる洪は、蛇頭としてのし上がり、今や手下から大哥(ダイゴー)と呼ばれる大物だ。  歌舞伎町を拠点にしており、日本のヤクザや中国マフィアとも密接に関わっている。  ママ自身の美貌と商才に加え、その洪の力だても有ったからこそ、今や赤坂で店を構えるまでになったのだ。
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