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寝癖のついた黒髪を撫でながら、蒼依と並んで歩き始める恭。小柄な蒼依は、長身の恭と並ぶとその差が浮きだつ。
「なんだよ、機嫌悪ィの?」
蒼依の表情から何かを読み取った恭が、半笑いで尋ねてきた。
「お母さんと喧嘩した」
ぶすっと膨れ、短く答える。すると、恭がケタケタ笑い出した。
「またかよー。今度はなに?」
「実力テスト」
「あー、なるほど。蒼依の母ちゃん、勉強に関しては厳しいもんなぁ」
恭は両手を頭の後ろで組み、青空を仰いでいる。
「もうやだ。試験がある度に口うるさいんだから。ほんと鬱陶しい」
「まぁ、そう言うなって」
他人事のように笑ってそう言う恭に、少し苛立ちを感じた。完全なる八つ当たりだが。
「恭は親に何も言われてないの?かなりひどかったじゃん」
仏頂面で問いかけるが、恭は相変わらずの能天気な笑顔。
「俺はまだ見せてないもん。今勉強どころじゃねぇんだよ。部活だけで精一杯」
「……あぁ、バスケ?」
「おう!試合までもう2週間切ってるんだよなぁ。絶対勝ちてぇ」
恭が目をキラキラさせながら伸びをする。その姿に、蒼依は無意識に羨望の眼差しを向けていた。
「いいなぁ、私も塾なんか行かないで好きな事したいよ」
「蒼依も部活入ればいいのに。動いたらスカッとするよ」
「だーかーらー、塾があるから時間がないの!ただでさえ成績落ちてるのに、部活したいなんて言ったら殴られそう」
激怒する母の姿を想像し、蒼依は思わず身震いした。それを見て、恭も納得したように頷く。
「おばさんならやりかねないな。俺が誘ったって言ったら、多分俺も殴られるわ」
そんな話をしているうちに、2人は学校の校門をくぐっていた。
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