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もう一人の少女は愛しげに咲き誇る桜をしばるくご覧になっていた。 今度は時が言った。 「次は、夕顔(ゆうがお)の番よ。腕飾り作って!」 夕顔はにっこりとして桜の木へと歩み寄り先ほど時の咲かせた桜の枝を一つ手折って花弁をひとつひとつ切り離されました。 そして、また夕顔も何やらつぶやき始められます。 「我が手より、いでよ!紡がれし糸よ!」 唱え終わるか否か、幼い夕顔の手から銀色に輝く美しい糸が出てきました。 それを、夕顔は器用に桜の花弁に通し、懐から取り出した美しい石で飾り見事な腕飾りを作られました。 時はそれを嬉しそうに受け取り、また、夕顔も照れくさそうに藍色のつややかな髪をいじりになりました。 その様子を影から見守っていらっしゃった殿は、こうおっしゃったといいます。 「この二人の娘の仲が永久に続くことを願わんばかりだ。」と。 その言葉に、そばに仕えていた黒い髪をもつ紅の瞳の少女と銀髪で海色の瞳をした少年が笑ったと伝えられています。 ですが、殿の願いは儚くも散り時の花のごとく 無惨にも散ったわけでございます。 [序*終]
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