ある発明

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「料理も召し上がってくれたまえ。 ここのレストランはなかなか評判がよいところらしい。 兄たちもよく接待に利用していると言っていた」 エス博士はテーブルに料理の載った皿を並べていった。 盛り付けは少し雑で二人分としては少量だったが、とても美味しそうだった。 きっと私の為にわざわざ兄たちが使っているレストランから取り寄せたのだろう。 心遣いはありがたいが、謎はますます深まっていった。 しかし、料理を食べ始めると、そんなことは忘れていた。 こんな美味な料理は食べたこともなかった。 私は夢中になって料理を平らげた。 私はさっき、エス博士の発明を大したことないものだろうと思ったことを反省した。 こんな素晴らしい食事を作り出せる調理器なら、確かに素晴らしいものだろう。 これなら、もしかしたら人類の為になる発明かもしれない。 私はすっかりエス博士のことを見直していた。 「実に素晴らしい料理だね。 こんなの初めて食べたよ。」 「気に入っていただいて、僕も嬉しいよ。 一昨日に食べたのと同じだと思う。 いやあ、この発明には苦労したからね」 「この料理が君の発明によるなら、確かに素晴らしい発明になるだろう。 やっぱり特許を取得しておいた方がいいんじゃないか?」 「いや、やっぱりこの発明は人類の為に使うべきだよ。 この考えは変わらない。」 私はついに、この疑問をエス博士にぶつけてみることにした。 「ところで、何故最初に私を招待したんだ? 別に私でなくてもいいだろう?」
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