ある発明

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エス博士は腕を組み、少し考えていた。 「いや、やっぱり君でないといけないんだ。 この発明のきっかけは君のおかげだからね。」 「私が君に何かしたかな?」 「君は覚えていないみたいだね。 コレだよ」 そう言うと、エス博士は胸のポケットから一冊の文庫本をとりだした。 スウィフトの『ガリバー旅行記』だった。 私は、少し思い出した。 「ああ、この本は……」 「そう、君が僕に薦めてくれた本だ」 確か、そんなこともあったなと思った。 「それがどうかしたのか?」 「私は高校生の時まで夢というものが持てなかった。 自分のやりたいこと、やるべきことを見いだせなかったんだ。 でもこの本を読んだ時、これこそ人類を救う考えだと思った。 この発明こそ自分に与えられた天分だと思ったものさ」 「ええっ?」 そんな大それたことを書いてある内容だったか? まあ、私は軽く走り読みしただけだから、内容はよく覚えていないが……
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