ある発明

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「君も内容は覚えてるだろう?」 「ああ、少しはね…… ガリバーが最初に行く小人の国…… たしかリリパットだったかな… そんな程度なら……」 考えてみると、読んだことも無い人でも、これくらいは知っている。 「僕がその中で一番惹かれたエピソードは、ガリバーが空飛ぶ国ラピュタの次に訪れるバルビバーニというところのだね」 そんなところに行ったかな? 全く覚えていない。 「ちょっと、本を貸してくれないか?」 「ああ、構わないよ」 エス博士から本を受けとると、カバーや側面が所々擦り切れている。 きっと肌身はなさず持っているのだろう。 「君も実物を見ないと、信用できないだろう? 僕の素晴らしい発明を見てみるかい?」 「いいのかい?」 「もちろんだとも」 そう言うと、エス博士は立ち上がり、応接室を出て行った。 私は本のページをパラパラめくりながら、エス博士に続いた。
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