ある発明

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あれからもう二十数年経っただろうか…… 私はエスのことはとうの昔に忘れていた。 エスとは高校卒業以来会ってはいないが、エスは私の事を覚えていたようだ。 思えば、学生時代のエスは変わった人として有名で、どちらかと言えば浮いた奴だった。 私を含め、変人扱いされたく無い人はなるべく関わらないようにしていた為、友人と呼べる同学年は誰もいなかったのかもしれない。 私にしても、話しかけられたから応じた、ただそれだけだった。 変わり者ではあったが、勉強は人以上にできたエスは、学校内でも数人しか行けないような、有名大学に進んだのまでは思い出した。 そんなエスか私に突然連絡があった。 大学時代からの研究が一応の成功となったので、一足早く私にだけ披露したいということだった。 聞いた話しでは、エスは大学では何かの研究に熱中し、卒業後もまともに就職せず、親のスネをかじり生活しているようだ。 後々知ったことだったが、エスの実家は複数の企業経営者で街の名士でもあった。 エスはその家の三男で、父親の事業は長男と次男がしっかりと継いでいるので、夢があるならと好き放題にやらしているそうだ。 今では、親の金で自分専用の研究所を街の郊外に建て、大学時代からの研究をずっと続けているという話しだった。 たぶん、その研究が実を結んだのだろう。 しかし、何故私なのかは私にもわからなかった。
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