第3話 別れと出会い

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 部屋の壁中には、びっしりと、花にたかるアブラムシのように、腐肉に群がるウジ虫のように、絵と写真が張り付けられている。  そこに1枚のキャンバスが置いてあった。  「な……」  足がもつれた。  どうしようもない。  その写真と絵を見てしまえば、どうしようもない。  道夫が振り返るのが、分かったが、彼の目前で、のろのろと足が止まる。  絵は、僕の目を捕らえ、足を捕らえ、心を捕らえた。それだけの価値がある。  青葉道夫の絵がそこにある。  未完成だが――なんて、ことだ。  部屋から暖かい風が流れ込んできて、生臭い、強烈な血の匂いが鼻につく。  見れば、床にどす黒いシミが、幾つも広がっていた。  全てを悟った。  涙が出そうに――いや、気が付けば、涙が頬を伝っていた。  「さよならだ」  先生が、僕の前で頷いた。  手には銀色のナイフ。  僕は首をふった。  涙で視界が曇る。  プールの底で、たゆたいながら、太陽を見上げているように眩しい。  「先輩……」  その呟きだけが、耳に反響した。  
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