第3話 別れと出会い

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 『はぁ? 悪いことしてないって、お前だろう、オレの基地こわしたのは?』  『基地?』  ぜんぜん見当のつかない単語に、言葉につまる。  『ひまわり畑の中に作ってた秘密基地だ』  『ヒミツキチ?』  『軽々しく秘密をしゃべるな』  虫取り網で頭を叩かれた。  痛かったが、ただ、ようやく男の子の言わんとすることが分かった。  お母さんから生えていつひまわり畑。  その光景がとても嫌いで、わたしはここ数日、日が暮れるまでひまわりを抜いていたのだ。  その作業に男の子に秘密基地が巻き込まれたのだろう。  よく思いだせば、ゴミみたいな物が積まれていた一角があった気がする。  『だって……だってだってだって、お母さんが死んじゃったから!』  『泣きやめ』  『うぅうぅ、無理だよ~』  怒りが収まってくると、また涙があふれてきた。  『仕方ないなぁ……』  男の子が天をあおぐ。  『……よし、とっておきをやろう』  男の子はごそごそとポケットを漁る。  なにが出てくるのかと見ていると、いくつかのアメ玉と、1枚に紙切れが出てきて、わたしの手に握らされた。  『……賄賂?』  『発言がフオントウな奴だな……』  いまいち、男の子の言葉は難しくて理解しづらかった。  わたしは背が高かったけど、上目遣いに男の子を見た。  『知らない人から物をもらうなって――』  『オレもいわれてる』  男の子はあいかわらずの仏頂面だ。  意外にも、何を考えてるのか分からない。  相手が何を考えているのか分からないことが、なぜか新鮮だった。  お父さんと同じだけど、どこか違う。  『いいから食べろ』  『でも……』  『悪いと思ってるなら食べろ』  問答無用の物言いに、わたしは溜息をついて、アメを口に放り込んだ。  シャワシャワ、とラムネの味が広がる。  あまりお腹はふくれないけど、甘くて美味しい。  歯にあたる音が子気味よい。  男の子はわたしの様子を見ると、自分もアメを食べ出した。  しばらく無言のままアメだけを食べた。  ころころ、ころころ。  ふと、涙が枯れていることに気付く。  『あの……なんなのこのアメ?』  『当たってた?』  『あ、当たり付きなんだ。ちょっと待って』  『えーと……はずれ』  『あー、くそっ!』  あまり悔しそうにじゃない顔で、悔しそうに男の子はぶつぶつ呟く。
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