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猫柄。
秘密基地。
猫柄。
ぽんぽん、とポケットを叩いて持ち物を確認する。
今日は、ある遠大な作戦を遂行しなくてはならない。
「うふふふ……」
その結果が、今から楽しみであります隊長。
「行ってきまーす!」
誰もいない教室にわたしは元気良く挨拶した。
今日も暑い。
じりじりと、帽子のひさし越しに強い日差しを感じる。
「あっ!?」
「うん?」
不思議に敵対むきだしの声に振り返ると、いつかのちっちゃい女の子がいた。
「……」
「なによ!?」
「はよはよ~」
へらっ、と手を振る。
「なんで挨拶するのよ!」
「なんでって普通だよ」
「普通だけど嫌なのよ!」
彼女はビーチサンダルで、ベタンベタン地団太を踏んでいる。
とても汗をかいていて、元気だなぁ。
辺りを見渡して、誰もいないことを確かめる。
「今日は直也くんならいないよ?」
「ち、ち、違うわよ、買い物よ買い物!」
かごを突き出して少女は声を荒げた。
でも、期待はしていたのだろう。
表情の動きとかじゃなくても、全身で感情が見て取れる。
「お手伝いかぁ。偉いねぇ」
「……なんか言い方が小学生に話かけてるみたいなんだけど?」
「気のせいだよぉ」
起き抜けで、舌がいまいちまわらない。
小学生じゃなかったんだね。
「そういえば自己紹介がまだだったかど、わたし青葉みく」
「……」
にこにこ。
「嫌よ……言わないわよ」
「キスした仲じゃない」
「してないわよ!」
じんじん、と耳が痛くなるような声量で女の子が叫ぶ。
「坂嶺貴恵よ」
へぇ、良い名前ね」
「みくに比べたら地味よ。月とすっぽん」
「そんなことないよ、可愛い。たかちゃんって呼んでいい?」
「べ、別にいいけど……」
蓮っ葉な感じで、髪の毛の先端をいじくりながら、女の子は照れたように天を仰ぐ。
その様子が微笑ましい。
わたしは村の西と、駅の方の道を眺めて、
「どっち行く?」
「駅」
「じゃあ一緒」
「……なにが言いたいの?」
ジト目でたかちゃんがうめく。
わたしはニコニコと歩き出した。
すぐに、たかちゃんが隣に並ぶ。
わたしは首を傾げて笑う。
「……言っとくけど、ただ帰り道が一緒なだけですからね」
「うん」
「それと、先輩のこと諦めていませんから」
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