0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
日曜日、敬老の日のプレゼントに悩んでいたら、おばの月子さんがたまたま来ていて、一緒に買い物へ行くことになった
二人っきりになっても、最近は、月子さんは泣かなくなった
だけど、血の繋がりがあるなかで、僕の一番の理解者だと思う
「ヨシくん」
月子さんの運転する車のなかで、不意に自分の名前を呼ばれて、すぐには反応できなかった
誰も、僕の本名由紀ーよしきーの名を呼ぶものはいない
自分でさえ忘れかけていた
「ヨシくん。もう少し、我慢してね…。私が何とか、お姉ちゃん達説得するから…」
月子さんは、前を向いたまま、何か決意した表情だ
だけど、月子さんでもあの人達を説得してどうこう出来るとは思えなかった
下手に希望もって失望するくらいならば、希望はいらない
そこからデパートに着くまで、無言になってしまった
「ヨシくん」
車から降りると、月子さんが話しかけて来たけど、それを僕は遮った
「月子さん。今は、まだゆきです」
自分で言って悲しくなった
「ゆき。今日は、何を買うか決めたの?
月子さんは、ちょっとだけ悲しそうな顔をした
僕の気持ちを考えて、多分<ゆきちゃん>じゃなく<ゆき>って呼んでくれたんだと思う
デパートの中で、思わぬ人を見つけてしまった
夏祭りの日に、恭ちゃんと一緒にいた男だった
「恭、おまえはウーロン茶でいいよな?」
っと言って、恭ちゃんから離れて行った
恭ちゃんは、近くのベンチに座って彼を待っている様だった
最初のコメントを投稿しよう!