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結局、タクミさんが邪魔で美月に相談はできなかった
でも、ゆきちゃんの誕生日プレゼントはちゃんと買えた
(喜んでもらえるといいな…)
思わず顔がにやける
登校し、教室に入るとゆきちゃんは既に席についていた
「ゆきちゃん、おはよう」
声を掛けると、ゆきちゃんはどこかちょっと寂しそうに
「おはよう」
っと微笑んだ
やっぱりどこか様子がおかしい気がする
聞いてもきっとはぐらかされるんだろうな
帰り道、何となく無言のまま歩き続ける
ついこないだまで感じていた夏は、いつの間にか秋の気配の方が強くなり始めている
空を見上げると、暗い灰色に染まっている
夏の最後の足掻きと言わんばかりに、台風が近付いているとの事だった
(あ、傘持ってきてないけど、大丈夫かな?)
今にも降り出しそうな雨雲に、恭の気持ちもどんよりと曇る
「じゃ、また明日」
ゆきちゃんの家の前で別れを告げようとした時だった
一瞬フラッシュの様なまばゆい光りに包まれたかと思った直後、どっどーんっと地響きの様な音がした
「きゃっ」
恭は、頭を抱えてしゃがみこんだ
「恭ちゃん?大丈夫?」
ゆきちゃんが、心配そうに覗き込んだ
「大丈夫」
っと口にしたが、全然大丈夫じゃなかった
恐怖で、顔が青ざめているはずだ
大丈夫だと強がりを口にしたところで、立ち上がる事すら出来ない
動けない所に、ザァっと大粒の雨が降り注いだ
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