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トーヤマ君は彼女達に背を向けると、私の手を引いて颯爽と歩き出した。
その間も、ドクンドクンドクンと私の鼓動は少しも落ち着きそうになくて
ただ、トーヤマ君の手の温かい温度を感じながら
トーヤマ君の大きな背中や、風に揺らされる髪に時々視線を向けながら
ただ精一杯、前を見て歩いていた……。
「……ごめん」
突然、トーヤマ君は立ち止まったかと思うと背中を私に向けたままそう言った。
「え?」
「……俺、手嶋に嫌な思いさせた」
いつにないトーヤマ君のその言葉が、胸に突き刺さるように響く。
「だっ、大丈夫だよっ!結果的に何もされなかったんだし、それに遠山君が悪いわけじゃ……」
「でも俺が手嶋の事好きだなんて言ったから、あいつらに呼び出されたんだろ?」
トーヤマ君は繋いでいる私の手をきつく握り締めた。
そしてもう一度、今度は私の方に振り返り、真剣な表情で「本当にごめん」と言った。
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