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「ちょっと!!誰なのよあの方!!」
憂を揺さぶりながら、ロールスロイスのリムジンの中で優香里がコソコソ言った
「さっき言ったじゃない、徳ちゃん」
「だからっ!!何処の誰だって聞いてるのっ!!」
「……さぁ」
ヘラヘラと笑う憂を見て、ため息をついて優香里は諦めた
(何だって見ない間に、こんな子になったのかしら…)
「フォッフォッ
そんなにビビらんでも取って食やせんよ」
優香里の声が聞こえたのか、徳治郎が笑って言った
「しかしなんじゃ、こんな可愛いおなご二人と一緒に飯が食えるとは、長生きするもんじゃの~
わしゃ娘も孫もおらんから、嬉しいわい」
ニコニコとしわくちゃの顔で徳治郎がそう言うと、
「失礼ですが、お見受けした感じですと、
私たちみたいな粗末なモノより、もっと素敵な方とご一緒されたほうが…」
優香里がそう言うと
「金に群がってくるようなおなごはいらんっ」
鼻息をフンッとさせながら、徳治郎がそう言った
「アハハ」
無邪気にそのやり取りを見て笑う憂に、
「あんたね………」
晶や鮎川や可南子、ましてや亮と付き合っていた憂
さらにはここ最近でモデル業で蓄えた貯金が膨大な金額になっていて、金銭感覚が壊れた憂に取って、徳治郎は特別な存在ではなかった
慣れてしまった感覚は、優香里とは同じ家族でも少しズレが生じてしまっていたのだ
「今日は二人には私が奢るからっ」
「いかん!おなごは金なんぞ出さんでええ!」
憂と徳治郎のやり取りを見つめながら、優香里がまたため息をついた
(無駄だ……この二人……)
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