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「はぁ………。」
聞こえないように小さくためいきをひとつこぼした男の子は、尊敬や憧れのまなざしを
全身に受けながら、桜のトンネルを歩いていく。
彼の名前は、雪走 陸-ユキバシリ リク-。
今日を以て、高校2年生となる男の子だ。学校指定の黒い学生服に身を包み、猫背ぎみの姿勢で、黒いリュックサックを背負っている。少し長めの黒い髪が、彼のこれまた少し吊り上った目を隠す。身長は170後半程度だろうか。よく見れば、人よりは綺麗な顔立ちをしているが、それ以外にこれと言って特筆すべき点のない普通の男子高校生である。
彼はもう一度ため息を吐く。
(毎日、毎日…本当に嫌になる。)
彼は視線を向けてくる周りの学生を、気づかれないように観察を始める。
「優奈ちゃんだ!やっぱり可愛い」
と、笑みをこぼしながら、呟く男子に
「奏くん…」
と、小さく名前を呼んで、顔を赤らめる女子。
ただ登校しているだけなのに、視線がリク達に集まる。
いや…撤回しよう。
〝リク達〟ではなく、ため息をこぼした彼の目の前を歩く〝美男美女〟 に。
美男美女の2人の耳には、彼らを絶賛する声々は届かない。
ただただ楽しそうに会話をして、ただただ楽しそうに笑うだけ。
その2つの微笑みは、周りの生徒たちの心を撃ち抜き、またファンを増やしていく。
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