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遥か上空―
雲海の上を巨大な三隻の飛空艦隊が飛んでいた―
その真ん中を飛ぶ最も大きな飛空艦隊の内部―
「クリューガー中佐!後30分ほどで世界樹の森に到達すると思われます!」
「そうか」
艦隊の中央に位置する座席に座る白い軍服に身を包んだ男が、目の前で敬礼する兵士に答えた。
ファレノプシス帝国軍、ルシウス・クリューガー中佐。
中性的な顔立ちに鮮やかなエメラルドグリーンの瞳が印象的な男だ。
まだ20代前半でありながら異例の速さで階級を上がり、そのプラチナブロンドの髪から『金獅子の中佐』と呼ばれるようになった。
そのルシウスの背後からドカドカと無遠慮な足音が近づいてくる。
「ようやく世界樹の森に着きそうだな。暇で腕がなまりそうだぜ」
「ヴァンクス騎士団団長殿…」
現れたのは日焼けした屈強な身体付きに赤茶けた髪を後ろに撫で付けた男だった。茶色の瞳が鋭く頬には大きな傷跡がある。
不遜な態度が一見すると庸平にも見えるが、これでも騎士団をまとめる団長だ。
「団長殿。今回の任務の総司令は私だ。くれぐれも命令に背くようなことはしないで頂きたい」
「分かってるさ。でも森の獣人共が黙ってるとは思えねーけどな」
釘を刺すルシウスに、ヴァンクスはニヤリと笑って返した。
ヴァンクスという男は命令違反などはしょっちゅう、今回の任務も勝手に付いてきたのだ。人間の数倍はあるといわれる身体能力を持つ獣人に興味があるらしい。
勝手気ままな振舞いをするが、騎士団団長を任されるのはやはりその戦闘能力の高さだ。
本来、騎士団は皇帝直属の組織で主に皇帝の警護や城の警備を担い、軍隊とは異なる。
だが今回の任務には力量のある者が欲しかったのでルシウスは同行を許した。
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