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「まぁ、その時は貴方に存分に働いてもらおう」
「ああ、任せな。ガキのお守りばかりじゃつまらないしな」
ヴァンクスの言うガキというのは、おそらく現皇帝のことだろう。
弱冠15歳で帝位を継いだ現皇帝だが、影では『お飾りの皇帝』囁かれている。
皇帝をトップに政治の中枢の元老院、そして帝国軍や騎士団を執り纏めるものが、今や権力は元老院と帝国軍に分散され、どちらが帝国の実権を握るか激しく対立している。
もはや皇帝と騎士団は蚊帳の外だ。
「ならば騎士団をやめて帝国軍に来ればいい。貴方ならすぐにいいポジションにつけるはず」
「はっ!あんなとこに行くぐらいならのたれ死んだ方がマシだぜ」
あんなとこ呼ばわりされた帝国軍に所属するルシウスだが、特に反論する訳でもなく軽く失笑する。
確かにあの魔窟にこの男は窮屈過ぎて自滅しかねない。
上を目指すなら魂を悪魔に売ることさえいとわなければならないだろう―
自分のように―
そしてルシウスは椅子から立ち上がると部下に向けて命令を下した。
「雲の下に降りる。着地の準備を始めろ!」
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