5.秘密

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   やがて、陣の車がゆったりと動き出す。  行き先も訊かず、雑談混じりで男の車の助手席。  見た目だけならただのカップルだな。  前髪を下ろし、眼鏡の陣の横顔をちらりと見る。  いかにも学生な彼に、ようやく安心出来た。  変なの。  女は普通、大人っぽい男に惹かれるもんでしょ。  黒服の、水商売の世界が似合う色っぽい陣をしっかり見ているのに。  少年っぽさの残る今の彼の方がいいだなんて。  ていうか、あたしのこの警戒心の薄さと、情緒不安定な感じは一体何なんだろう。  落ち着き払った、いつもの滝沢留衣はどこ行った。  黙ったままのあたしに、ハンドルを切りながら陣は息をつく。 「姫、男いるの?」 「え?」 「いや。そんなの何も気にしないで、キスしちゃったから」 「ああ……そんなの気にする相手、いないから大丈夫だよ」 .
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