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「姫はほかの黒服とも仲いいじゃん。ほら……秋人とか」
「そう? 秋人は誰にでも気さくに話す子だし、弟感覚だよ」
あたしがほかの男の子と気軽に話すこと、気にしてるのがわかるから、努めてサラリと否定する。
ふーん、と陣は煙草をくわえた。
「よかった。彼氏とかいたら泣くよ、俺」
くわえた煙草に火を点けながら、そんなことをサラリと言った。
ねえ、待って?
こんな短期間に、恋とかしたこと、ないんだけど。
あのキスの時みたいに、トクン、トクン……と自分の心臓の音が聞こえる。
ひたすら陣の横顔を見つめた。
赤信号で、車のスピードが緩くなる。
陣が、ふいにあたしを見た。
「……姫、俺のものになる気、ない?」
眼鏡ごしの瞳は、真っすぐあたしだけを見ている。
身体の芯から、熱が沸き上がって来るのが判った。
この、真っ黒な瞳が──欲しい。
魔法にかけられたように、無言のままあたしは頷いていた。
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