5.秘密

12/15
前へ
/26ページ
次へ
  「姫はほかの黒服とも仲いいじゃん。ほら……秋人とか」 「そう? 秋人は誰にでも気さくに話す子だし、弟感覚だよ」  あたしがほかの男の子と気軽に話すこと、気にしてるのがわかるから、努めてサラリと否定する。  ふーん、と陣は煙草をくわえた。 「よかった。彼氏とかいたら泣くよ、俺」  くわえた煙草に火を点けながら、そんなことをサラリと言った。  ねえ、待って?  こんな短期間に、恋とかしたこと、ないんだけど。  あのキスの時みたいに、トクン、トクン……と自分の心臓の音が聞こえる。  ひたすら陣の横顔を見つめた。  赤信号で、車のスピードが緩くなる。  陣が、ふいにあたしを見た。 「……姫、俺のものになる気、ない?」  眼鏡ごしの瞳は、真っすぐあたしだけを見ている。  身体の芯から、熱が沸き上がって来るのが判った。  この、真っ黒な瞳が──欲しい。  魔法にかけられたように、無言のままあたしは頷いていた。 .
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加