6.追って来た過去

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   金木犀の香りがすると、冬へ向かって深まる秋の気配に溜め息が出るものだけれど。  今年は、陣とのキスのおかげで彼がちらついて仕方がない。  恋をした時っていうのは、どうしてこう鼻がよくなるものなんだろう。  思春期の頃の、胸がドキドキする恋をした時は、やたらプールの水の匂いが纏わり付いたっけな。  恋っていうのは、やたら五感を全開にさせるものなのかも知れない。  だってほら、陣がホールの中を行き来するのを見る度、あたしの鼻は金木犀の香りを思い出そうとする。  こういうのは、感じる度にあ、刻まれた、と自覚してしまう。 .
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