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いつも通りステージで歌っていると、やたら目付きの悪い2人組が入って来たのが見えた。
そういえばこのステージは、ホール全体をきちんと見渡せる。
歌いながら女の子達や、お客様の異変にいち早く気付ける、とってもいい場所だ。
黒服達ともっと意思の疎通をはかれるようにすれば、ここから彼らにアイコンタクトでもして、軽い指示が出来るかも知れない。
だとすれば、ただ突っ立って歌うだけだなんて、何て勿体ないことをしていたんだろう。
初めてそんなことに気付いた自分に驚いた。
後で、堂本さんに相談してみよう。
歌手風情がでしゃばらなくていい、なんて言われない限り、あたしに出来ることは少なくない筈だ。
ふと、陣の言葉が甦る。
『何をどこまで仕事とするかは、それぞれのものさしっしょ』
何だか、勇気づけられる。
あたしは、ここに着飾って立ってるだけの人形じゃないんだな、って感じで。
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