6.追って来た過去

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   いつも通りステージで歌っていると、やたら目付きの悪い2人組が入って来たのが見えた。  そういえばこのステージは、ホール全体をきちんと見渡せる。  歌いながら女の子達や、お客様の異変にいち早く気付ける、とってもいい場所だ。  黒服達ともっと意思の疎通をはかれるようにすれば、ここから彼らにアイコンタクトでもして、軽い指示が出来るかも知れない。  だとすれば、ただ突っ立って歌うだけだなんて、何て勿体ないことをしていたんだろう。  初めてそんなことに気付いた自分に驚いた。  後で、堂本さんに相談してみよう。  歌手風情がでしゃばらなくていい、なんて言われない限り、あたしに出来ることは少なくない筈だ。  ふと、陣の言葉が甦る。 『何をどこまで仕事とするかは、それぞれのものさしっしょ』  何だか、勇気づけられる。  あたしは、ここに着飾って立ってるだけの人形じゃないんだな、って感じで。 .
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