5.秘密

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   すっかり支度を済ませたあたしがホールをウロウロしているのを見ながら、陣はふぅとひと息ついた。 「姫」  人差し指で、こっちへ来い、という仕種をされる。  無言で陣の方へ歩いて行くと、つい……と手を取られた。 「???」 「ハイ。こっち」  陣はピアノの傍のソファーまであたしを導くと、そのまま座らせた。 「な、何?」 「じっと見られると、何だか緊張するんだな。だから、そこにいて」  陣の真っ黒な裸眼の瞳が少し潤んで、はにかんだようにふっと緩んだ。 「ね、ねえ。仕事中はコンタクトなんだっけ?」 「うん。初めてしたけど、快適だねぇ」 「快適?」 「さっきラーメン食って来たんだけど、視界が曇らない!」  力みながらまたソファーの掃除を始めた陣に、ぷっと笑いが込み上げた。 .
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