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やがて、ホステスさん達が出勤し始めた頃、陣が開店準備で出たゴミを持って裏に行くのが見えた。
どうにも陣が気になって仕方ないのは、理由の判らないキスのせい。
あたしは、堂本さんが帳簿と睨めっこしているのを確認してから、そっと陣の後をついて行った。
「あれ、姫、どしたの?」
何事もなかったかのように、ゴミ袋を所定の場所に出した陣は、後ろに来ていたあたしを見るなり目を丸くした。
想像もしてなかった、って感じの陣の態度に、少し胸が痛くなる。
少し頬を膨らませて見せると、あたしの考えていることが判ったのか、陣は眉尻を下げて笑った。
「ああ、金曜の夜のこと」
それが少し照れ臭そうな笑顔で、陣にとって別に大したことじゃない、と思われているわけじゃないと判って、やっとホッとした。
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