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陣はセットした頭を崩さないように、そっと掻いた。
「えっと、今日上がったら姫にはちゃんと声かけようと思ってたんだよ」
「……ホントに?」
「うん。だってここ、職場恋愛禁止なんだろ。初日から破ってるって堂本さんにバレたら、出入り出来なくなっちまう。だから、店ではその話出来ないなって」
……考えてたのか。
それが判ってたら、居ても立ってもいられなくて、陣と2人きりになるだなんて迂闊なこと、しなかったのに。
あたしのささやかな自己嫌悪が判ったのか、陣はクスクスと笑った。
「女の子不安にさせたらダメだよな。うん、俺が悪かった」
俯いて口を尖らせたあたしを見ながら、陣はまたニコリと微笑む。
そして、キッチリ巻いたあたしの髪の毛をひとふさ、指に絡ませた。
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