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晴れの夜は、悲しい歌を歌わないと決めている。
言葉が判らなくても、雰囲気でホステスさん達の士気が下がるから。
雨の日の悲しい歌は、何故だかしっとりしたムードになるから、1ステージに1曲くらい歌うけど。
「それってさ、姫がちゃんと歌の世界表現してるからだろ?」
パーキングの陣の車の中、少し緊張しながらそんなどうでもいいことを話していた。
というか、ここでこうしてる自分が少し不思議なんだけど。
何も、誘われたから陣の車に乗り込んだわけじゃない。
部屋や車、男のテリトリーに入ることの意味が判らない程、子どもじゃないもの。
あたしにとってのささやかな違和感はそこだ。
あの叔父貴に育てられたあたしは、男の下心のアブなさについてはしこたま植え付けられている。
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