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「女はすぐ身体に出るんだよ。姉貴見てるんだから、いやって程判ってるだろ」
あたしはパン、と膝を叩いた。
「だから! 大丈夫だって言ってるじゃない!」
一瞬にして、車内の空気が凍りつく。
バックミラーの中、山本さんの視線がうろうろと慌てたのが判った。
藤原さんの顔は見えないけど、多分我関せず、そんな感じでいるんだろう。
自分でもしまった、と思ったけど、刹那のセーブが利かなかった。
寝てないからなのか、お父さんの訃報に少なからずナーバスになっているからのか、自分でもよく判らない。
すると、隣の陣が溜め息をついた。
「なぁ、姫」
「え?」
苛立ったあたしは、叔父貴ですら手に負えない。
だからいつも苛々が治まるまで放置されるのが常なんだけど、陣はお構いなしって感じで話し始めた。
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