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「やっぱり、な」
叔父貴は、お母さんの話を聞いて肩を竦めた。
「入退院を繰り返す生活でも充分暮らしてける筈なのに、時々足りなそうにしてたよな。こんな浪費家だったっけ、って不思議だったんだけど。これで納得がいったよ」
「そんなふうに陰でコソコソするくらいなら、何で戻って来ないのよ」
あたしが苛立ち紛れに吐き捨てるように言うと、お母さんは寂しげに目を伏せた。
「お父さん、寂しがり屋で、意地っ張りだったから。お母さんしか、それが判る人がいなかったのよ」
カーディガンを羽織り直しながら、お母さんはふぅと溜め息をつく。
その瞳に、何だか慈愛が満ちているように見えて、よけい苛々した。
「バカみたい。女作って出てった男に、未練がましい」
「留衣」
言い過ぎだ、と叔父貴があたしの肩を強く掴んだ。
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