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「ねえ、陣」
仕事を上がった後、2人でどこへ行くでもなく、公園のブランコに腰かけて、暖かい缶コーヒーを手にしていた。
帰るのが嫌でこうして過ごすなんて、まるで中学生のカップルみたい。
あたしが名前を呼ぶと、陣は少し窮屈そうにしながら「ん?」と瞳を傾けてくれる。
「陣って、実家? 1人住まい?」
「一応、実家だよ」
「そっか」
それ以上会話が広がらず、あたしは俯く。
言葉で伝えるのがもどかしくて、あたしはさっと立ち上がった。
「姫?」
邪魔になった缶コーヒーを、ブランコの柵の上に置いて、陣を振り返る。
キョトンとあたしを見上げる、眼鏡越しの真っ黒の瞳。
その瞳があまりに澄んでいて、あたしは一瞬躊躇った。
けど、抑えることも難しそうで。
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