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言われて、ハッとなった。
立ち上がろうとすると、腰を引き寄せられてしまう。
「藤乃さんと、明日会う約束してただろ」
「何で、知ってるの?」
「休憩中の姫の顔見に行こうとしたら、控え室のドア開いてて、聞こえた」
じっと見下ろす陣の顔が怖いくらいにきれいで、あたしはその顔から目を離せなかった。
陣はブランコの動きを止める。
キィ、と錆の擦れる耳障りな音がした。
「まだ、ややこしいこといっぱい考えてんだろ?」
「……判らない」
「自分でもよく判らないくらい、ややこしいことばっかり考えてんだってこと、自覚して欲しいな」
陣の熱っぽい瞳が、軽く尖った。
怒りは収まったように見えるけど、陣が何を考えているのかよく判らなくて、こんなに近くにいるのに、まだ怖い。
陣はしばらくあたしを見つめた後、深い溜め息をついた。
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