10.姫の我儘

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   言われて、ハッとなった。  立ち上がろうとすると、腰を引き寄せられてしまう。 「藤乃さんと、明日会う約束してただろ」 「何で、知ってるの?」 「休憩中の姫の顔見に行こうとしたら、控え室のドア開いてて、聞こえた」  じっと見下ろす陣の顔が怖いくらいにきれいで、あたしはその顔から目を離せなかった。  陣はブランコの動きを止める。  キィ、と錆の擦れる耳障りな音がした。 「まだ、ややこしいこといっぱい考えてんだろ?」 「……判らない」 「自分でもよく判らないくらい、ややこしいことばっかり考えてんだってこと、自覚して欲しいな」  陣の熱っぽい瞳が、軽く尖った。  怒りは収まったように見えるけど、陣が何を考えているのかよく判らなくて、こんなに近くにいるのに、まだ怖い。  陣はしばらくあたしを見つめた後、深い溜め息をついた。 .
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