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「あのなぁ、姫」
呆れたような声。
「人の心配するなとは言わないけどさ、思いやるならそこに俺も入れてくんない。せっかく姫に誘われたのに、断らざるを得ない俺の理性、スゴイよねー」
……え?
瞬きの後、陣の瞳から力が抜けた。
「……陣……」
「やっと悟ったんなら、何も言わないでクダサイ」
やだ。どうしよう。
急に、恥ずかしくなった。
要するに陣は、叔父貴のことを考えたあたしに怒りを覚えたわけで。
それって、嫉妬、って言うんじゃなかったっけ。
「こら、ニヤニヤすんな。まだ俺、怒ってんだからな」
額をゴツン、と頭にぶつけられる。
「いたっ」
目の前の陣は、軽く唇を噛み締めると、少し恨めしげにあたしを睨み付けた。
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