9.修羅場

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  「今日ね。藤乃さん同伴で遅くなるから、いい機会だと思って」 「な、何かあった?」 「あった、なんてもんじゃないの」  藍さんは忌ま忌ましげに灰皿に煙草を押し付ける。  強めに潰された煙草の火種は、不完全燃焼で焦げ臭くなった。 「昨夜、いつもみたく阪崎先生がお忍びでいらっしゃったの。藤乃さんは閉店まで引き伸ばして接客しててね。その辺りまではさすが藤乃さんね、って皆で話してたんだけど」  そこで藍さんは、苦い表情で腕を組む。  あたしは予想が全く出来ずに、眉根を寄せた。 「そのままアフターだって帰ったんだけど、あたしが帰ろうとしたら、表の通りにまだ阪崎先生の車があって。その車の陰で藤乃さんと阪崎先生、抱き合ってキスしてたの」  ガン、と頭の中で音がした。  枕営業だったなんて冗談じゃないとか、ホステスのプライドを汚されたとか、藍さんは悔しそうに何か言ってた気がするんだけど。 .
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