160人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
雨が降る度に、厳しさを増して行く季節。
せっかく満開になった金木犀は、秋雨にちぎられ、流されて行く。
この香りがとても好きなのに、残念だ。
だから秋は何となく物悲しいのかも知れないな。
そんなことを考えながら、藤乃さんと待ち合わせたレストランに足を向けた。
そういえば昨日の夜、秋人にも言われたっけ。
最近女の子たちどうしたの? って。
あと、秋人はあたしと陣のことも訊いてきた。
「付き合ってるの?」
そう聞くから、曖昧に笑ってごまかしといたけど。
でも興味本位とかじゃなくて、心配してる感じだった。
【月下美人】の黒服はみんなよく言えばおっとり、悪く言えばぼんやりしてて無関心すぎる人たちが大半だと思ってたけど、そういうふうに他人のことを心配してくれる人もいるんだなあって思った。
.
最初のコメントを投稿しよう!