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「けどな、留衣? お前は昔から他人の顔色ばかりを窺う子どもで、未だにその癖が抜けないよな。だから俺は、お前が気を遣わずに心から笑えて、安心出来るような存在になりたかったし、そういう男と付き合ってくれればいいって、そう思ってる」
「……うん、ありがと……」
叔父貴は煙草の火を見つめながら、ぼんやりと続ける。
「陣はそういうヤツだって、思ったけどな」
ツキン、と胸が痛む。
陣は、あたしと叔父貴のことをちゃんと判ってた。少なくとも、判ろうとしていた。
「あたしも、そう思った。だけど、もうダメなのかな。何か、判んなくなっちゃった……」
ダメになるのなら、そうしたのはあたしなんだ。
元気出せよ、叔父貴はそう言ってあたしの頭をわざと乱暴にグシャグシャになるまで撫でて、ピザを取ってくれた。
食欲のないあたしに食べろとしこたま勧め、無理に食べたのを見てから、安心して帰って行った。
今日は休んでもいいぞ、と言い残して。
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