171人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
ゆっくりと目を開けると、知らない窓が視界に映る。
ここ、どこだっけ。
ぼんやりとした頭で考えながら小さく身じろぎすると、後ろから強い力で抱き寄せられた。
振り返らなくても、背中に感じる体温が陣のものだと判る。
それが不思議で、小さく笑った。
昨夜は、あのまま陣の部屋に泊まったんだっけ。
思い出して、余韻に浸る。
あたしがそれ以上動かないでいると、陣は安心したように身体を寄せて来た。
眠っているとは言え、縋るようにあたしを抱き竦める陣に、胸が締め付けられる。
癒えぬ彼の孤独や痛みが、それで判るような気がして。
そうだよね。
家族と暮らす筈だった部屋に1人で帰る日々は、どれほど心に影を落として行ったことだろう。
それは、大人になる程堪えることだったと思う。
.
最初のコメントを投稿しよう!