16.拭われる不安

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   やがて陣も目が覚めて、今度はあたしがお揃いのカップでコーヒーを入れた。  すると、陣は黒いカップを軽く持ち上げ、あたしに示して見せる。 「なあ、留衣。何か辛いことがあった次の朝は、このカップでコーヒーを入れるって約束にしようか?」 「約束?」 「そう。たとえば、俺に何かあったら、次の朝留衣がコーヒーを入れて欲しいな。留衣に何かあったら、俺が入れる」  あたしは軽く首を傾げて、陣を見た。 「じゃあ、喧嘩した時は?」 「そんなの、悪い方が入れるに決まってるだろ?」 「喧嘩は両成敗じゃないの?」 「両成敗って……留衣、古いなぁ」 「なっ!」  そんな他愛もないことを話しながら、この約束が「あたしが離れて行かない」証明になればいいと思った。  ずっとずっと傍にいて、翌朝のコーヒーを入れるよって。  このカップでコーヒーを飲む度、また約束を繰り返して行こう。  いつか、それが当たり前になるくらいに。 .
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