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脳天気に挨拶をしてしまってから、藤乃さんは今日病院へ行く、と言っていたことを思い出した。
陣と過ごした昨夜が濃過ぎて、すっかり忘れてしまっていた。
藤乃さん、病院どうだったんだろう?
控え室には、やたら早く出勤して来たあたししかいなかったから、何だか緊張感。
すると、藤乃さんは何だか気の抜けたような顔で、控え室に足を踏み入れた。
「おはよう、ルイちゃん」
トコトコ、とあたしの横をすり抜け、藤乃さんは椅子に座った。
そういえば、軽く巻いてあるだけの髪は、いつもの姫スタイル程完璧じゃない。
「……藤乃さん?」
話しかけたけど、目の前の藤乃さんの様子は、疲れている、というには何か違う。
放心状態って感じだ。
あたしが顔を覗き込むと、藤乃さんはのろのろとあたしを見上げた。
「……ルイちゃん、私、広樹さんに何て言ったらいいだろう……」
目が合った瞬間、藤乃さんの瞳がジワリ、と潤む。
心許ないその瞳に、縋られた気がした。
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