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瀬戸内の嘉徳と言う部落に一人の女の子が生まれた。
それはそれは生まれながらに可愛い顔の女の子だった。
将来はどんなに美しくなるか、村の誰もがうわさをしていた
名前はナベとつけられ皆からはナベ加那と呼ばれていた。加那というのは尊称でもある呼び方」
親は富むでなく貧乏でなく島では人の羨む暮らしぶりだった。
男の親は、ある時は漁に行き鰹から地ぬいゆ{海の底に住む魚」を捕って来た。何人かの家人も居たようで畑を持ち家人にサトウキビをつくらせていた。
娘は蝶よ花よと育てられ年頃のメラベ{女子」となり噂に違わず村一番のきょらむん{美人」となっていた。
島の娘は年頃になると、機織りをするか親の手伝いをして農作業をするか、いずれにしても働き手となるのが普通の生き方である。
だが、ナベ加那は特別扱いで良家のお嬢様のようにくらしていた。
島歌にある
加徳ナベ加那や、いきゃさる生まれ
親に水汲ませ、 ゆあみすんちど
訳 嘉徳ナベ加那はどんな高貴な生まれなんだろう。
親に水を汲ませて風呂、水浴びをしてるそうだよ。
その頃からナベ加那の評判は悪くなっていった。
友達遊び「島では同じ年の者同士が旧暦の15日の月の出る夜に遊ぶのがならわしであった。
その遊びの場でも自分の容姿の良さをひけらかすような事が多く真からの友達も居なくなっていた。
ある日の15日遊びにナベ加那がこなかった
誰からともなく、ナベ加那をぎゅっと言わせてやろうという事になり機会が来るのをまっていた。
その機会は程なくやってきた。
ナベ加那は一人家人にちやほやと育てられたので泳ぐことはなかったのを皆知っていた、そこで、海に落として溺れさせ、
その時に助けてやれば少しは恩を感じて優しくなるだろうと考えたのである。
岩の上であおさ「海苔]取りに夢中になっていたナベ加那はみんなの悪巧みには少しも気づくことはなかった。ついつい海の近くまで進んでしまった。
チャンス到来とばかり、だれともなくついっと押してやった。
足場は海苔で滑りやすくちょっとバランスを崩し倒れてしまった。
「ああっ」と一声残してナベ加那は海に落ちてしまった。
泳ぎの出来ないナベ加那はたちまちに溺れ海水をたっぷりと飲んで沈んでいった。
海に落として助けるつもりだったが予定より早いナベ加那の溺れに助ける暇もない。
美貌が招いた悲しい出来事
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