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moonlight プロローグ
四月末日。
「いそげ、いそげ、いっっっそげぇ――――っ!」
ゆっくりと夕日が沈んでいく空の下、 岩国総合高校(いわくにそうごうこうこう)二年の麻倉音緒(あさくら ねお)が、学校の校舎前まで続く急こう配な坂――通称・総合坂を全速力で走っている。自慢のポニーテールが風に揺れる。
今日は待ちに待った日。
昨年、『軽音楽同好会(けいおんがくどうこうかい)』という部活を創ったネオにとっては、その日と同じぐらい夢にまで見た特別な日だ。
自分と親友、そして新たに入部した二人の一年生部員で結成されるのだ。
そんな、重要かつ、スペシャルなイベントがあるっていうのに、
「もう、なんで、なんでねてたのよ――っ!!」
部活で使うプレハブ小屋は、先に演劇部が使うということになっている。なので、実際の活動は6時あたりから始まる。
本来なら学校にいて、いつものように親友と図書室で本を読んだり、今日の活動について話したかった。しかし、『あるもの』を忘れて家に戻らないといけない事情があった。なので家に帰り、その重大なものを手にした……までは良かったのだが、「まだ時間がある」と余裕をこいでいたため、カーペットの上でボーっとしていたら、時の流れは急加速した。
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