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翔「行かないでほしい」
そう言って僕は美央を抱き締めた。
美央「……翔」
翔「僕は、美央のどんな悲しみも遠ざけるよ。君の夢を捨てる悲しみも……今日が最後だよ……僕の前で、美央が泣くのは……」
美央「……翔」
翔「美央の答えは……?」
美央「わかんない……決められない。だからこれからもずっとこうやって翔の腕の中で考え続けるよ。それでいい?」
翔「……ああ。そうすればいい」
そう言うと、美央は少し笑った。
美央「今日が最後だから、最後の涙、いっぱい流してやる」
翔「あっでも、少しだけ涙をとっておいて……」
美央「え……」
翔「おじいちゃんになった僕を、美央が見送るときの涙」
美央「!!」
翔「………結婚しよう」
僕は美央を抱き締めたまま彼女の答えを待った。
美央「涙の予約、承るわ」
翔「ありがとう」
少しずつ降りだした雨が僕達を暖かくつつむ。僕達はいつのまにか、手のひらを重ねていた。かけがえのない未来に向けて…………
THE END
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