プロローグ『幼き日々と現在と』

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◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ──9月29日(日) 午後15時3分  辛い時、オレは必ずこの日記を読む。  財布に大事にしまっている昔の日記の1ページ。  自分への『戒め』と『報い』の為に。 「龍一君、この荷物を2階の洋間に運んでくれるか。陶器だから気をつけるんだぞ」  トラックの積荷コンテナにあがっている加藤さんから、両手に抱えるくらいのダンボールを受け取る。  ずしりと腰に来る重さが、このバイトの大変さを表していると思う。  引越し作業はスピード勝負だ。  チンタラやってたら雇い主の人にどやされる事もある。  オレは受け取ったダンボールを一度足元に置いて、首にかけてあるタオルで水玉の汗を拭く。  今は土曜日から続く引越しのバイト中だ。  今日で2日目、この現場は今日で終わらせなければならない。  ぽつりぽつりと、一軒家の屋根を雨音が打つ。
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