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{人が持つ心というものは、無限の可能性を秘めている。仲間との信頼、異性との恋愛、大切な人との別れ、どれも、心に多大な刺激を与え、その者を大きく揺れ動かす。その時その心を持つ者は、今までにない行動を起こす事ができる。}
私には、理解できない内容だった。
私には、【心】というプログラムは入っていない。
私はその本を閉じた。
すると、本の隙間からするりと何かが滑り落ちた。
手に取ってみる。
[手紙]というものだった。
白い紙を折って、シールで口の部分を閉じていた。
開けていない様だ。
裏返してみる。
【EM1599へ。エルフィンより】
EM1599、私の名前である。
エルフィン…エルフィン・ユーリ
博士の、名前。
私は、シールを剥がし、中に入っていた小さな紙に、目を通した。
{EM、調子はどうだい?悪い所はないかい?まぁ、君がこれを読む頃には既に僕はこの家にいないと想う。君がこの本に目を通すのも、何十年後になっているのかもしれない。僕はそれでもよかった。君がこれを見つけてくれた事に感謝する。}
博士は、私が掃除することを知っていた様だ。
私は、続きに目を通していく。
{もうこれを読んでいる頃には、もうこの世界には人類は残されていないと想う。でも、これだけは、これだけは記憶しておいてくれないか?
この世界を、嫌いにならないでほしい。僕は、この世界が好きだ、でも、君が嫌いになってしまったら、僕は悲しい。こんな腐った世界でも、僕はいたんだ。君が住んでいる、この家に。}
いくつか、わからない単語が目に写った。
好き。
嫌い。
悲しい。
私にはわからない。私は、搭載されていた辞書で、この単語を調べてみた。
好きとは、likeとloveというものがあって、likeの好きは食べ物、テレビ番組などが好き、loveとは、主に異性、同性などに伝える、自身の強い気持ち。
嫌いとは、自身の苦手、気に入らないものを拒絶するということ。
悲しいとは、強い感情に打ち震え、心を閉ざしたり、涙を流すこと。
また、【心】がでてきた。
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