1・高校入学

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丸刈りが、パチン、と刃物を出した。 陣平は、すぐに 「スタートアップ!」 と、言うと、薄く霊服を張る。 霊服は、厚み2ミリほどに押さえていたが、ナイフなら防御には充分すぎる。 矢島は、相変わらず、へらへらしている。 これはただ事ではないと、陣平は感じた。 普通、刃物を向けられれば、かなりのプレッシャーを感じる。なかなか慣れるものでもない。 矢島のように、変わらず対応するには、相当の場数が必要だ。 リーダー格のでかいのは、手に大型のメリケンサックをはめた。 これはこれで危険だ。 陣平はまず、矢島にナイフを向けてニタニタしている丸刈りを何とかすることにした。 丸刈りは、ナイフをなめながら、 「俺が刺さないと思ってるなら、そいつは、間違いだ。俺さまは、今までに」 と、口上をたれているところを後ろから後頭部を陣平にどつかれた。 「べ」 丸刈りの口内にナイフが刺さったが、幸い、陣平にどつかれて、意識がなくなっていた。 ばたんと、倒れる。 陣平は、リーダー格に 「仲間連れて、帰りなよ。全員のしたら、後が面倒だからさ。」 と忠告した。 でかいのは、仲間をたたき起こし、つれ帰る支度をした。去り際に、 「憶えたぞ。お前ら。」 と、捨て台詞を吐いて消えた。 矢島は、はー。とため息をついた。 「やっちまった。後が面倒だなぁ。」 陣平は、霊服を解いた。 ナデシコが、校門まで出てきた。 「お疲れ様です。」 矢島は、陣平の肩を叩いた。 「やっぱり、かなりヤルじゃないか?」 「矢島さんも、高校生離れしてますよ? どこかで、場数踏んでますね。」 矢島は、ひらひらと手を横に振った。 「内心ひやひやだ。大体、このあと、仕返しに来られたらどうしようと、思ってる。」 ナデシコが、真面目に受けて、安心させようとした。 「たぶん、大丈夫です。仕返しに来たら、陣平さんに任せて下さい。」 陣平は、困惑した。 言わなくてもいいことを、ナデシコにしてはめずらしく、口にしているからだ。
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