1・高校入学

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陣平は、なにかいたたまれない気持ちになった。 「なんかさあ、みんな俺のお姉ちゃんか、オフクロみたいダなあ。」 瀬織は、キョトンとした。 「奥さんて、そういうものよ。だいたい、アタシは姉でもあるし。」 「そうなのかあ。いや、別に移動手段の確保と、乗ってみたいだけで、他意はないよ。」 瀬織は、例により早かった。 「条件が、ひとつ。霊服張って乗ること。 それなら事故起こしても死なないから。 バイクは、あなたが貯めてる給料から、買えばいいし。」 「サンキュー。」 スラリが、気が付いた。 「あれ、あと1つ、願い事が許されてるじゃん?」 陣平は、首を振った。 「それは、とっておいてもいいかなあ? 早急に欲しいものも、ないしね。」 瀬織が、ふーん、と、陣平の顔をみる。 「等身大ヤルンダーJを建てたい、とか、言うかと思ったけど。」 「まさかそこまでは。」 「成長したのかしら?」 「好きだけどね。ヤルンダーJは。」 陣平は、いささか照れた。 入学した高校では、陣平は、偽名を使わなかった。 この学校で作戦行動するわけではないからだ。それほど素性を隠さなくてもよい。 陣平は、登校初日の放課後、部活動の勧誘の嵐に見舞われた。 昇降口から、一歩出ると、待ってましたとばかりに、勧誘の声がかかる。 「キミ、そう、君だよ、空手やらない?」 身長180センチまではなさそうな、空手着の男子が、声をかけてきた。 今さら学生空手でもない、と考えていた陣平は、 「いやー、僕には無理です。」 と、すげなく答えた。 男子は、意外そうな表情をする。 「あれ?1本拳を鍛えてるようにみえるけど?どっかで、やってたのかと思ったよ。」 その男子は、思いの外、スルドイ。 陣平は、少々面倒に感じた。 「いやあ、違います。では…」 行こうとしたが、男子は、あきらめない。 「そう言わず、見るだけ、頼むわ。誰かつれてかないと、主将にドやされる。助けると思って!」 あまりにしつこいので、陣平は、結局、見るだけ、ということで、体育館に連れていかれた。 2つある体育館のうちの、1つに入ると、剣道部、薙刀部、空手部、合気道部、などが、区画を分けあって活動していた。
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