5625人が本棚に入れています
本棚に追加
フィリアは窓まで寄ってから振り向く。
「身体は大丈夫なの?」
「うん、オイラは元気だよ。リーは大丈夫だった? どこに飛ばされてたの?」
「幸い隣町にね。他の皆は……」
「オイラは分かんないや、ゴメンね」
「そう」
ゾネはベッドにぽすんと座った。その拍子に橙色の髪が揺れる。
ゾネは両手を見つめ、グッと握った。
「……リーには、混ざってるのが分かるよね」
何が、とは問わずともフィリアには分かってしまう。
ゆっくりと窓に手を掛け、遥か彼方まで広がる空を見つめた。
頬に触れ、ふわりと髪をすくって行く風。
しかし、その風が肌に触れるたびにフィリアは複雑な感情を抱く。
「人々はこの空を見て、綺麗だ、って思うのかな」
ゾネはフィリアの紅い髪を数秒見つめ、目を細めると顔を外した。
「思うよ。オイラも思うもん」
扉が開いてから毎日続いている青天白日。
それは──流れ出て来ている精霊達の力が関与しているに違いない。
空気に混ざる精霊達の魔力を普通の人間は感じ取る事が出来ない。
近付く脅威を感じ取る事が出来ない。
.
最初のコメントを投稿しよう!