§106 大きな絵画に白滲む

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 フィリアは窓まで寄ってから振り向く。 「身体は大丈夫なの?」 「うん、オイラは元気だよ。リーは大丈夫だった? どこに飛ばされてたの?」 「幸い隣町にね。他の皆は……」 「オイラは分かんないや、ゴメンね」 「そう」  ゾネはベッドにぽすんと座った。その拍子に橙色の髪が揺れる。  ゾネは両手を見つめ、グッと握った。 「……リーには、混ざってるのが分かるよね」  何が、とは問わずともフィリアには分かってしまう。  ゆっくりと窓に手を掛け、遥か彼方まで広がる空を見つめた。  頬に触れ、ふわりと髪をすくって行く風。  しかし、その風が肌に触れるたびにフィリアは複雑な感情を抱く。 「人々はこの空を見て、綺麗だ、って思うのかな」  ゾネはフィリアの紅い髪を数秒見つめ、目を細めると顔を外した。 「思うよ。オイラも思うもん」  扉が開いてから毎日続いている青天白日。  それは──流れ出て来ている精霊達の力が関与しているに違いない。  空気に混ざる精霊達の魔力を普通の人間は感じ取る事が出来ない。  近付く脅威を感じ取る事が出来ない。 .
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