§106 大きな絵画に白滲む

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 ──ヴィルガイア王国の西隣国とされるティーダ王国では、ヴィルガイア王国の行動について怪しく思う者が現れ始めていた。  数日前にティーダのフォースは東海岸で倒れていた少年と少女を救出した。  しかし、軍が厳重管理している“通過証”を軍人ではない少年が所持していた事と、少女の瞳が碧い事が大問題となり、ティーダのフォースは少年少女をティーダ王都部隊に送ったのであった。 「……もう、五日」  通過証保持で疑いを掛けられている少年クルスは、お世辞にも寝心地が良いとは言えない固いベッドの上で仰向けになり、ぽつりと呟く。  灰色の壁、白いシーツ、頑丈な格子が取り付けられた窓。  牢屋ではないだけましだと思うが、軟禁部屋もやはり居心地が悪い。 「レイちゃん、ちゃんと食えてんのかなあ?」  短い黒髪の後ろで指を組んでそれを枕にし、猫のようにつり上がった大きな目をゆっくりと閉じた。  隣の軟禁部屋にはアシュールの生き残りであるレイがいる。  予定では今日、ヴィルガイア王国のフォース本部の兵士が迎えに来る事になっている。 .
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