§106 大きな絵画に白滲む

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 しかし、ティーダ部隊が納得していないのはクルスも分かっていた。  クルスが持っている通過証は、紛失すれば大罪人とされてしまうほど貴重な物である。  軍人ではない一般人が雇われとして通過証を持っている。  その事実はどう考えても異常だ。  また、レイは碧い瞳を持っている。  アシュールの民であり、尚且つ魔法はほぼ使えない。  そんな少女の事さえもヴィルガイア本部隊は雇っている。  とはいえ、権力は本部が圧倒的に有利だ。  ヴィルガイア王国部隊にティーダ王国部隊は抗えない。  それが幸運にもクルスとレイの身を守る物となっていた。 「……教官、怒るかな。怒るに決まってるか」  横向きになるように寝返り、クルスは手のひらを見つめる。  この手で一体何を守れただろうか。  否、この手は何も役に立たなかった。 「……開いちゃったんだよな、精霊界」  非力な手だ──クルスはグッと手のひらを握り締めた。  目の前で鍵は消え、扉が開いた。  人間を憎む精霊の王をこの目で見てしまった。  抱いた感情は純粋な恐怖。 .
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