§106 大きな絵画に白滲む

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 ──ヴィルガイア王国南西部の大きな町ネザーロの病院にフィリアは来ていた。  リディアの力によって飛ばされた後、フィリアはネザーロの隣町のギルドに助けられていた。  頭の整理が完了するのに数日かかってしまったが、フィリアが助けられた同じ日にネザーロでも少年が保護されたという話を偶然耳にする事が出来たのは幸いだった。 「すみません、七日前に十二、三歳ほどの少年がこの病院に運ばれたと聞いたのですが、分かりますか?」  受付の若い女性は私服姿のフィリアを不審な目で見ながら書類を漁り始める。  さすが大きな病院であって、多くの人々が忙しなく行き交っていた。  軍服を避けたのは正解だっただろう。  あの服ほど目立つものはなかなかない。 「お待たせしました。七日前ですね、はい、居られます。ただ、この患者の病室をお教えするにはお客様の身分証明が必要となるのですが……」  申し訳なさそうに伝えて来る受付嬢に対し、フィリアは心の中でこの仕事も大変なんだろうな、と何気なく思う。  フィリアは左耳に髪を掛けた。  揺れる白いピアスとリングピアスが露になる。 .
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