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蒼のソックリさんは私の反応に気を遣ったのか、「私は少し席を外します。……ゆっくり休んで下さい」とだけ言ってスッと立つと襖を開け、部屋から出て行った。
ソックリさんの後ろ姿を見送りながら思う。
(なんで『蒼』やと思ったんやろ……。外見は顔以外は全然ちゃうのに……)
確かに顔はソックリだか、きものを着ていても動きが何だか様になってるし、髪型も後ろに一つにポニーテールのように結んでいて違う。
ならば、何故、間違えたのか……。
他に蒼と似ているところはどこだろう。
目を閉じて考える。
(……ああ、そうや……。あの人、顔立ちだけやなくて、身に纏ってる雰囲気みたいなもんがソックリなんや……)
蒼よりも話し方が丁寧だからか、全体的に大人びている気がする。実際、蒼よりも少し歳上なのかもしれない。
けど。
どこか素直で。
上手く表現できないけれど、彼の周囲の空気が何だかとても柔らかく暖かだ。
蒼は私に対してだけは毒舌なこともあるけれど、それは大概が照れ隠しで、側に居ると、それはそれはとても心地好く感じるくらい、柔らかく暖かな人だ。
清水寺観光をしていた見知らぬ老人の荷物係になったり(あの辺りは坂だらけだ)、出町柳辺りで迷子になった小さい子供の親を一緒に探して講義に遅刻したり……。
蒼は道端で困っている人を見かける度に、「どうかしました?」「大丈夫ですか?」と声をかけては手伝っていた。
ソックリさんも多分、同じような感じなのではないだろうか。
もしかしたら、私もそんな理由で此処にお世話になっているのかもしれない。
(顔だけやなくて雰囲気まで同じやと、身に着けてるモンが違っても、人ってこんなにも似るもんなんやなぁ……)
変に感心した。
――――それにしても。
(……ここは一体、何処なんやろう?)
横になったまま、改めて辺りをキョロキョロと見回してみる。
部屋の広さは、畳の数を数えると五畳程。
広くはないが、部屋には布団と小さな踏み台のようなものしか目立つものがないので狭さはあまり感じなかった。
ソックリさんが出て行った襖の反対側には、窓というより障子がある。
ここから、日が燦々と降り注いでいたのだろう。
私の右手側には、握り締めていた黒いきもの、先程の桶、綺麗に畳まれた私の半幅帯が置かれてあった。
(……ああ――――)
他にもあった。
――――行灯だ。
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